【花はさよならまた来る春に 惜しむ涙が人生さ】自詠
唐時代の詩人 于 武陵の作「勘酒」
君に勧む金屈巵
満酌辞するを須いず
花發けば風雨多く
人生別離足る
『山椒魚』を著した井伏鱒二はこの詩を次のように訳した。
「花に嵐のたとえもあるさ さよならだけが人生だ」
これを受けて昭和の劇作家の寺山修司は
「さよならだけが人生ならば また来る春は何だろう」
と自身の詩の一部として詠った。
学生時代から書の題材として書かれてきたのを数多く見てきた。
しかし、書家は他人の言葉だけを書くだけではいけないと、歴史を鑑みて反省した。
そこで平成の終わりに、恥ずかしながらこれらの詩を受けて自らの言葉で綴ることにした。
「花はさよならまた来る春に 惜しむ涙が人生さ」
花は散ってもまた咲くが、人はそうはいかない。
去る方ではなく、残された方にこそ惜しむ涙は流れるもの。
だからこそ一瞬一瞬を大切に生きたいと思う。
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書家 書道家 根本知 Nemoto Satoshi オフィシャルサイト
(神楽坂書道教室)